四回目香川1

5月22日

相変わらず早くに目が覚めてしまった。

いい加減に目を覚まさんかと、諭されて覚ます

よりかはましだけど。

6時にホテルを出る。

6時5分には栗林駅に着く。

りつりんと読む。

グリーンチャンネルの競馬中継キャスターに「栗林さみ」

なる女性がいるからずっとくりばやしだと思っていた。

「さみ」って名前、ある意味現代的かもしれないけど、

単純に考えると103歳くらいのおばあちゃんの名前かも

知れないと思えなくもない。

グリーンチャンネルにはこの他にも、豊田市出身の

人もいる、名前は忘れてしまったが。

でもやっぱりグリーンチャンネルの華はやっぱり

梅田陽子さんですよね。

元ミス学習院、明るく電気でズーズー弁まじりな

喋りがきゃわいい。

突「電気ってなんですか」

あっ、失礼、元気の間違いでした。

話が脱線してしまい申し訳ありませんでした。

 

6時29分の便に乗り、高松に6時37分に着いた。

ホームに降り、改札を通り抜け、そのまま真っ直ぐ

行くとタクシー乗り場があった。

「根来寺までやって下さい」

運転手さんは年配の方だった。

ま、総じて運転手さんは年配の方が多いものだが。

ひょっとしたら運転の最中にくも膜下出血を発症

するかも知れないという一抹の不安を抱きつつも

、それでも道連れになったならそれはそれで宿命

だと、潔くタクシーに乗る。

雨の日に札所の階段で滑って足を捻挫して病院へ

担ぎ込まれたお遍路さん、その松葉づえを返しに

このタクシーに乗った話、今治から来てウインズ

高松で大儲けしてタクシーで今治まで帰った

お客さん、逆打をするから大窪寺までやってくれ

というお客さんなど運転手さんはいろいろ話してくれた。

どうせなら高松駅から歩けばいいのにと思う。

まだまだ修行が足りんのう。

突「タクシー乗る奴が偉そうに言うな」

別におしゃべりな運転手さんではないですよ。

私が話を聞き出すから喋ってくれるだけで

何も言わなければ運転手さんもだまっています。

タクシーは西へ向かった。

市役所を通り、図書館を通り、香東、香西、植松と

ひたすら西を目指した。

「意外と平坦ですね、ここらあたり」

「高松というのは山を除けば殆ど平地

ですよ、だから高松は自転車に乗る人が

凄く多いのです」

運転手さんは私の知らない情報を教えてくれた。

運転手さんの情報であるから確かである。

少なくとも「るるぶ」と言う名の情報誌よりは。

「高松は平坦地が多い」この言葉は私の脳に

インプット、これで一生忘れないであろう。

やがて根来口の辺りからタクシーは左折し、

文字通り根来の札所へと山道を登り始める。

「根来寺の先はどうします」

運転手さんが切り出してきた。

「根来寺までで結構です。あとは白峰寺まで歩きます」

「長い坂道が続きますよ。それに距離も結構ありますよ」

「覚悟の上です」

私はきっぱりと言った。

根来寺は白峰寺より標高が高い。

まずタクシーで根来寺まで行き、そこから白峰寺へ

下り、さらに国分寺へ下る、と言うのが今日の

私の算段であった。

7時少し過ぎ根来寺に着いた。

結構きつい上り坂ではあるが、アスファルトの道

だから歩いてもさほどの苦痛は感じないと思った。

この次は根来寺までは歩こうと思っているから

よく見ておいた。

既に数人の人がお参りをしていた。

納経所へ行くとまだ開いてなかった。

5分ほど待っていると、お待たせしましたと

おじいさんがやって来た。

納経所で待たされたのは初めてである。

納経をしてもらいながら白峰寺までの所要時間

を訊く、歩きですかと言う、そうだと答える、

それなら1時間半だと言う。

時刻は7時20分、いざ白峰寺へと向かう。

木陰もあるし、今日もさわやかな風が吹いている

ので涼しい。

道案内には白峰寺まで8kmと出ている。

やってやろうじゃないか、とファイトが沸く。

ファイト!たたかうきみのうたをーたたかわない

やつらがわらうだろー

 

道は思ってたよりも広い。

乗用車がスピードを出してもすり替われる広さだ。

道路はくねくねと大きく曲がり、登ったり

下ったりを繰り返す。

が、やはり下り坂が7、上り坂が3といったところか。

途中に遍路道への道標があった。

白峰寺まで3,5km、対して車道5,7km。

さあ、どうするんだよ、と道標が問いかけてきた。

行き着く先が同じでこれだけの距離差があるのは

、とりもなおさず遍路道の坂のきつさを表すものだ。

それに私は一人遍路だ、何かあった時にどうする。

例えば足を骨折するかも知れない、マムシに咬まれる

かも知れない、次にこの道を訪れる人が3日後だったら

私はどうなる。

仮にすぐに発見されたとして、救急隊員はこの坂道

を担架で数キロも搬送しなければならない。

おまけに私は携帯電話すら持っていない。

非常に危険だ。

私は車道を行くことを決心した。

大きく、くねくねと曲がる道、私はレーサーが

よく使う省エネ走行ならぬ歩行をした。

すなわち右へ曲がるコーナーであるなら右側

歩行、左側に曲がるコーナーなら左側歩行へと

道路を斜めに横切りながら進む。

めったに車の来ない道路だから出来ることだ。

決して交通量の多い所ではやらないように。

今、この道路で「乗って行きませんか」と誘われた

なら私はどうするであろうかと、ふと考えた。

答えはNoである。

その理由はなだらかな坂道であるから、天気が良く

心地よい風も吹いているから、今日が最終日で明日

から楽できるからである。

そんな訳で私の体からは「乗せてってオーラ」は

出ていないみたいで誰一人からも声はかからなかった。

いい言葉だね「乗せてってオーラ」って。

今後も使わせて貰おっと。

所々に元レストランとか元山小屋風民宿とかの廃屋

が点在する。

これは何を意味するのだろうか。

それだけお遍路さんが減ったということだろうか。

車遍路が増えたということだろうか。

ただ単に魅力のない店であっただけなのだろうか。

ちなみに今もこれらが営業中であったら入るか

と問われれば、入りませんと答えます。

やっぱり駅近くのビジネスホテルが一番だし、

レストランで飯食ってる暇があったら、おにぎり

かじりながら歩いたほうが先に進みますものね。

貧乏性なのかな私は。

途中でお遍路さんに逢った。

どうして車道を歩いているんですかと訊くと、

荷物が重くて遍路道ではきついからですよ

と言った。

やっぱり誰も遍路道はきついと感じているのだ。

ここで結論が出た、遍路道と車道があったなら

車道を通った方が楽だし安全である。

これからお遍路をする人には私からは勧めておきます。

少し時間はかかりますけどね。

急がば廻れと言うでしょ。

ま、それしかない場合は仕方ないですがね。

うどん屋さんのところから右折し、500mも行くと

白峰寺はあった。

根来寺の人は1時間半と言ったが、車道を歩いて

来たので2時間かかった。

お参りを、そそくさと(すいません)済ませ境内を

出た時9時35分であった。

これで国分寺までは遍路道を下る一方だから

10時42分の気動車に間に合うはずだ。

国分寺までの道を、先ほどのうどん屋さんで訊いた。

来た道を引き返すと右側に国分寺への道標が

あるんでそこを降りて行けば枝道もないので

簡単だ、とうどん屋さんは言った。

地図の感じからして私は道標まで1kmくらい

だろうと思った。

しかし1kmを過ぎてもそれらしきものはなかった。

途中で香川ナンバーの軽が休憩をしていたので

訊いてみるともう少し先だと言う。

さらに1kmほど進むが、まだなかった。

もう少し、と言う言葉、人によってイメージが

違うからな、ある人は500mかも知れないし、

またある人は2Kmかも知れない。

さらに進むと空き地で何かの行事の準備

をしている自治区の役員さんといった感じの

人達に出会った。

私がるるぶの地図を見せると、こんな道

(国分寺への道)はみたことがないと二人は言った。

この鬼無駅に向かう下り道は記憶があるがと言う。

この鬼無駅へ向かうか、そうでなければ戻って坂出

方面に行くしかないですよと心細い事を言う。

最後の一番おとなしそうな人は、ここがかんぽの宿

だから、もう少し行けばありますよと言った。

まさにこの一言、お大師様の言葉だと感じた。

さらに1Kmほど行くと、やはり道標はあった。

時刻は10時をゆうに越していた。

私は10時42分の便をあきらめた。

下り坂はかなりきつく(この表現でいいのかな)

しかも丸太の階段は高く、短足の私は辛うじて

着地できるくらいのものであった。

さりとて20cmほどの脇道を歩けばマムシが

飛び出して来そうだし。

随分と疲れる歩行の後に、道は普通の下り道になった。

ただ、落葉が一杯積もっていて滑る危険性はあるが。

最御崎寺で逢った人は、この道でスズメバチが

たくさん飛んでいていて、怖くて引き返したと

言っていたが、幸いにも一匹も出会わなかった。

やがて落葉の下り坂はアスファルトのそれにと

変わった。

途中で若い娘さんが一人登って来るのに出会った。

こんにちわと挨拶を交わした。

しかし、あぶない、こんな山道を一人で歩く

のはとても危険である。

昔っから強姦事件というのはあった。

何が危険なのかと言えば、今の人は強姦した

上に口封じに命まで奪う。

これが危険なのである。

やっぱり女性一人では遍路道は通らない方が

いい、と改めて思う、しろひ猫であった。

住宅地に出た、地図の通り進むが寺はなかなか見えない。

軽トラックの男性に出会う。

男性の教えてくれた通りに進む。

もう一度下り道から始めよう。

下り道で初めての分かれ道に出会う。

真っ直ぐ行く道と右へ行く道。

右へ曲がり50mほど行って左に曲がる。

後は道なりに進み、信号機の手前に四辻が

あり、そこを右折してしばらく行くと左に見える。

男性はこのように説明をしてくれた。

見事なイクスプレインであった。

やはり客観的にものを見る力は圧倒的に

男性の方が上だね。

女性はこのような能力に劣っている、というか

そもそもDNAがない。

四国お遍路をして得た、私の結論である。

おっと、これで地球上の全女性を敵に

回してしまったかな。

淋しいけど事実だから仕方ない。

四辻を右に曲がり、農業をしていた女性に

国分寺はどこかと尋ねた。

女性はあそこに見えると指差した。

しかしこちらから行くと裏になるから、大通りまで

(33号線)出て右に曲がって表から入るように

とのアドバイスをいただいた。

この女性は国分寺をとても愛してるなと感じ、

とても嬉しくなった。

私は素直に従った。

大通りに出ると今日初めての自販機を見つけた。

コカ・コーラの赤い奴を出口に落とした。

栗林駅での缶コーヒー以来の水分補給である。

札所に着くまでの瞬く時間に飲み干してしまった。

当たり前だ、根来寺から10数キロも歩いて来たん

だもの、喉も乾くよ。

この旅、最後の札所を終わった。

実に80番目に80番札所という快挙をやってのけた。

突「どこが快挙だ」

駐車場の横を通った。

徳島、松山、愛媛、と結構四国の人もお遍路を

しているんだなと初めて知った。

今日は日曜日だから、休日を利用して車で少しづつ

廻っているのだろう。

次の便が何時なのかわからないが駅に向かう。

駅に着くとすぐに気動車はやって来た。

1番ホームへ入線と時刻表には書いてあるが、

どちらが1番なのか明示がないのでわからない。

仕方ないので高架橋のど真ん中でどちらに入るか

見てから降りた。

なぜ私が10時42分の便にこだわったのかと

言えば宇多津11時17分発の岡山行き普通に

乗りたかったからです。

一度、鈍行で瀬戸大橋を渡りたかったのです。

でも、その夢は叶いませんでした。

それではと、私は宇多津岡山の特急券と岡山名古屋の

特急券を購入しようとしたところ車掌さんは、

この乗車券ですと坂出宇多津間の乗車券が

必要ですと言われた。

私が高松で改札の女性職員に乗車券を見せて

これで宇多津まで行けますかと訊いた時

はい行けますと答えたのにどうなっているのだろう。

JRの社員もきっぷに関してあまり知らない人も

結構いるんですね。

ま、日和佐で買った名古屋行きの乗車券だから

常識的にいえば坂出経由ですよね。

こちらが「宇多津経由名古屋行きの乗車券を

ください」と言わない限りは。

今の注文、取り消していいですかと車掌さんに

問えば、いいと言う、マリンライナーって特急券

要らないですよね、と問えば、はい要りませんと

言う、それじゃ岡山名古屋間の特急券だけ下さい

と、ようやく商談はまとまった。

11時59分坂出到着。

25分後にマリンライナーは発車の予定だ。

考えてみたら、まだ、おみやげが買ってなかった。

私は一階に降り、改札を出て、向かいのコンビニ兼

キオスクのような店で「讃岐うどん」を三つ買った。

まんじゅうやタルトのようなものより、これが一番

喜ばれる。

自分の分も買うからよくわかる。

やっぱり讃岐うどんはうまい。

向こうからやって来る予讃線とこちらの高徳線が

交わる。

川崎重工の煙突から白い煙があがる、YKKの

工場も見える。

いつもの瀬戸大橋線の風景だ。

13時02分岡山着13時16分の「のぞみ」に乗り

名古屋に向かう。

相変わらず帰りの新幹線は混む。

座れない人も一杯いる。

車内販売がやって来た。

前の席の人が駅弁を買ったので、私もつられて

買ってしまった。

まずくはなかった、のでうまかったのでしょう。

よくテレビを見てると、どうですかと作った人が

食べてる人に聞いてるシーンがある。

そら、あんた、脅迫やで。

まずい、と言うにはスカイツリーから飛び降りる

に等しい度胸がいる。

みなさんも、あの「うまい」は信用しないで下さい。

腹もふくれたので、窓から景色を見ようとしたが

どの窓もブラインドが降りていた。

これじゃ闇夜の列車じゃん、といささかご機嫌斜め

になってしまった。

みんな疲れてしまったのかなー。

私にはまだ景色を見て行く電気、いや元気は残っているぞ。

それでは仕方ないので総括といきましょうか。

鉄道運賃34000円 だと思う

バス運賃8000円 であってほしい(土佐電はよそよりちょっと高い)

宿泊費20000円 ことによると

お土産代4000円 という説もある

タクシー代6300円 ここだけの話

飲食費5000円 のやや上あたり

納経料ならびに賽銭7000円 about

記憶喪失分 2000円 around

合計86300円 maybe

道を尋ねた人 68人

全歩行距離 83km

今回の旅行で一番印象に残ったこと。

やっぱり竹林寺で出会った娘さんかな。

こけかたがよかった、吉本で鍛えれば

ものになるかも。

今回は山が多く、今までで一番きつい行程となった。

しかし天気に恵まれたことはお大師様の陰の

力だと思う。

誰だって、出来れば雨は降らない方が

いいですものね。

清滝寺、神峯寺、根来寺、白峰寺の難所も終わり

あと8寺です。

また今回も、今まで廻ったお寺を順番に並べて

いきます。

68 69 66 65 52 53 51 50 49 48

46 47 55 59 58 57 56 54 62 61

63 64 60  3 4 5 2 1 12 13

14 15 16 20 11 10 9 8 7 6

18 19 21 67 70 44 45 43 41 42

40 39 38 37 72 73 74 75 76 77

78 29 30 33 34 32 31 35 36 28

27 26 25 24 23 22 17 82 81 80

タクシーで行った所以外は道路もお寺

も鮮やかによみがえってきます。

それでは皆さんまた会いましょう。

6月9日弥谷寺71、天皇寺79、志度寺86

6月10日一宮寺83、八栗寺85、屋島寺84、長尾寺87、大窪寺88

6月11日松山観光(泊)

6月12日高知観光(泊)

6月13日徳島から高速バス

 

「まもなく名古屋に到着いたします。お出口は

左側になります」