三回目の5

4月16日

いよいよ最後の日だ。

当初くろしお鉄道ごめん、なはり線から牟岐線という計画

もあったが、今回を含めて、あと2回ではとても廻り

切れるものではないと判断した私は今日を最終日とした。

私は朝食が終わったらすぐに出られるようにお遍路バッグ

とリュックを持って食堂に入った。

出された食事はご飯と味噌汁以外は私にはよく

わからないものだった。

間違いなく私はグルメレポーターとしては失格である。

が、ガリガリに口の痩せている私にはとても

おいしい朝食でした。

隣で食事をしている女性に話しかけた。

「アースクウェーク ラーストナイト」

すると彼女はびっくりしましたと言った。

前日フロントで旦那さんらしき人と英語で話している

のを聞いていた私は流暢な英語で話しかけた。

突「どこが」

彼女は国際結婚をし若い時から長くアメリカに

住んでいるので何十年ぶりかの地震に驚いた

と言った。

別に彼女の英語を私が訳したわけではない。

彼女は日本語でそう言った。

突「そんなことは誰でもわかっている。インを

間違える男だから」

ああ、一生言われそうだな。

「それじゃ、楽しい旅を続けて下さい」

と彼女に別れを告げホテルを出た。

私はまず75番札所善通寺を目指そうと信号を渡ると

反対側の車線にコミュニティバスらしきものが

赤信号で停車した。

時刻は7時を少し過ぎたばかり、車の通行量も

少なかったので私は道路を横断し運転手さんに

歩道から話しかけた。

すぐにドアが開いた。

「このバス札所にも行くバスですか」

「ああ、曼荼羅寺に停まるよ」

「それって何番の札所になりますか」

「たしか72番だったかな」

その言葉に私はバスの中で、年甲斐もなく

小躍りしてしまった。

「整理券はないんですか」

「これはコミュニティバスだからお金はいらない」

運転手さんの言葉に私は再度小躍りしてしまった。

突「落ち着きなさい」

ただ無料・・・これこそが英語でいうところのフリーである。

昨日の予約電話でステーションホテルが空いていたら

私はこのバスに遭遇していなかったであろう。

いや例えグランドホテルに泊まったとしてもホテルを

出る時刻が数秒早くても遅くてもこのバスをキャッチ

出来ていなかったであろう。

まさにお大師様の配慮。

有難うございますと心の中で手を合わせる。

これで観音寺でのかわいいママさんとの遭遇、本山寺

からの帰り道での時刻表の見直し、宇和島での早朝気動車

の発見、テントさんとの遭遇と今回も5つもの配慮を頂いた。

突「久万高原で、誘ってくれたドライバーは」

だって私の行く方向じゃないもの。

あれはあのドライバーさんのただ単なる優しさから

出た行動ですよ。

お大師様は係っておりません。

それでもあの時は有難うございました。

バスはコミュニティバスらしく民家の間をくねくねと

回りながら7時47分曼荼羅寺に着いた。

時刻表で次のバスの時刻を見ると、11時47分であった。

改めてお大師様に感謝する。

朝も早くから団体さんが二組ほど来ていた。

やはり沢山廻ろうと思うなら最初の寺に7時前に

着くくらいでなきゃいけない。

ま、私の場合公共交通機関だから仕方ないけど。

お参りをして出釈迦寺へ廻る。

お寺の詳細について知りたいのなら他のブログを

参照のこと。

南に向かうきつい坂を500mほど行くと出釈迦寺がある。

境内に捨身ヶ嶽遥拝所があった。

この像を拝むと学業成就や物忘れにご利益が

あると言うので拝んだ。

突っ込みに馬鹿にされないように。

山門に立つと右の方角に善通寺の町並みが見える。

それほど遠くはないようだ。

来た道を引き返し、突き当たりの曼荼羅寺から右に

曲がり少し行って左に曲がり団地の中を通り県道

48号線に出る。

今日もいい天気だ。

2日目の午後を除けば好天に恵まれたお遍路旅

であった。

48号線を道なりに行くと昨日見たグリーンの

ネットが見えて来た。

ここは市営の野球場であった。

野球場を過ぎたあたりに左に入って行く道が

あり甲山寺の立札があった。

どうだいわかりやすい道案内だろ。

観音寺の住民もこれくらいの説明をしてほしいものだ。

200mほど進むと平坦な地に甲山寺はあった。

10分もせずにお寺を出て再び48号線を逆戻りして

野球場を過ぎた辺りから左へ曲がる。

と言っても左へ曲がる道はこれ一本しかないが。

1キロほど行くと左側に駐車場があり、境内へと

続く道がある。

大きなお寺であった。

どの寺も隅から隅まで回ったことがないので、

偉そうなことは言えないが、今までの札所の

中では群を抜いて、大きさといい、格といい

一番であった。

お遍路さんを含めた観光客も石手寺を抜いている。

くやしいと石手寺が手に石を持って投げつけて

くるが、横峯寺が横やりを入れて、それを叩き落とす。

そんなユーモラスな光景が目に浮かぶ。

善通寺。

ガイドブックによると大師誕生の地とある。

真言宗善通寺派の総本山。

和歌山の高野山、京都の東寺と並ぶ弘法大師

三大霊跡の一つとある。

このお寺の名が市の名となっている門前町である。

善通寺市善通寺町の善通寺。

豊田市トヨタ町のトヨタ自動車本社とよく似ている。

決してイヤミで言ってるのではない。

私は正義感ぶる気などさらさらない。

広い境内があると、ついつい長居をしたくなるものだ。

が、わたしは納経を済ますと、五重塔のある東院の

山門から東に向かって歩いた。

東でわからなければ左に向かって十数分歩いた。

JRの乗車券はその乗車距離が100kmを超えれば

後戻りをしない限り何度でも途中下車できる。

我が地方で言えば、岡崎から柏原で100kmを超える。

この乗車券を使えば、名古屋で名古屋城を、清洲で

清洲城を、岐阜で岐阜城を、大垣で大垣城を、

見学することも可能だ。

春風亭昇太なら大喜びするきっぷである。

突「でも何か一つ忘れていませんか」

「なにを」

突「安城」

「それはノーマークだった」

突「いえあれは日本のデンマークでした」

 

善通寺駅から9時50分発の普通に乗った。

一駅先の金蔵寺で降りた。

駅の横を通る道を東に向かい、東でわから

なければ左に向かい、県道24号線を横切り、

しばらく行くと左側に金倉寺はある。

駅の名前は金蔵寺(こんぞうじ)であるが寺の

名前は金倉寺(こんぞうじ)である。

どちらにしてもめでたい名前である。

蝋燭、線香、賽銭、虫のいいお願いと済ませ

納経所へと向かう。

「お願いします」

と職員さんが向きを変えることなく納経できる

ように納経帳を差し出す。

職員さんは、まず3つの朱印を押し、その上に

達筆で納経をする。

朱印の朱と墨が混じり合わないかと心配するが

そんなことは一度もない。

ただ、墨だけは上の紙に移るので間に新聞紙を

挟む。

「有難うございます」

と300円を支払い納経帳を受け取る。

最初の頃、細かい金がなく千円札を出しておつりを

貰うことにためらいがあった。

でも職員さんは冷静かつ事務的に応対する。

私達にとってはお遍路であっても、これは彼らに

とっては仕事なんだといつのまにか思うようになった。

これでいいのだ、なにもおかしくない。

急いで駅まで戻る。

所要時間はガイドブックの通り7分だった。

金蔵寺から10時18分発の普通に乗った。

一駅先の多度津で降りた。

ホームの階段を降り右に折れて改札口を出た。

駅員さんに道隆寺への道を尋ねた。

駅前の通りを右に曲がって、突き当たりを

右に曲がって下さいと言われた。

何か自分のイメージしていた方角と違うことを

言われたような気がした。

時々こんな感覚に襲われることがある。

それは降りたホームの位置から階段への方向が、

進行方向とは逆の場合に起こる。

つまり電車の中で右側にあるとイメージしていた

対象物は体の向きを変えても依然として残って

いるからだ。

いい勉強をさせて貰った。

駅員さんの言う通り突き当たりの県道21号線を

右に曲がりJRの高架橋を渡り道隆寺に着いた。

実に、このお遍路60番目の札所である。

お参りを終えて21号線に出る。

東へ向かうお遍路さんを見た。

恐らく郷照寺へ向かうのだろう。

距離にして7キロとガイドブックに記されている。

私は西へ向かい次の信号を左に曲がった。

多度津から11時06分発の普通岡山行きに乗る。

このまま乗り続ければ終点岡山に12時22分に到着する。

私は宇多津で降りた。

恐らく時間的にみてもこれが今回最後の

札所になるであろう郷照寺に向かうために。

駅を降り目の前を左右に走る道路を左に行く。

郵便局の信号を渡り、右折し、県道33号線に出る。

そこを左に曲がり、最初の信号を右に曲がり少し

幅の狭くなった道を500メートルもいくと

郷照寺である。

道隆寺であったお遍路さんよりも早く着いてると思う。

境内に入るといきなり納経所があった。

同時に団体のお遍路さんが沢山いるのも見た。

私は急いで納経を済ませた。

「団体さんが来たら大変だから、先にやっときます」

と言い訳をしながら。

「個人の方が来れば優先的にいたしますよ」

職員の人はそう言った。

お参りを終えた。

これで今回のお遍路は終わりである。

昨日までは11の寺しか廻れなかったが、今日は

一気に七寺も廻れて気分爽快である。

最後に讃岐うどんでも食べて打ち上げにしようと、

道すがらうどん屋をさがした。

しかし数軒あったうどん屋はいずれも行列が出来て

いて駄目であった。

今日は土曜日、しかも正午近いのであるから

仕方ないのかも。

私の中に、行列に並んでまで物を食べようという

考えは一切ない。

私はキオスクで数個のお土産用の讃岐うどんを

買って宇多津のホームに立った。

待つのは「しおかぜ14号」12時34分発である。

やがて「しおかぜ」はやって来て私は車上

の人となった。

その時私はリュックを背負ってなかったことに

気がついた。

私は急いで列車を飛び出し、座っていたベンチの

所まで戻り、事なきを得た。

宇多津の駅で高松行きと岡山行きは切り離される。

そのためしばらくしおかぜは停車をする。

助かったのはやはりお大師様のお蔭かな。

大したものは入ってないんですが、中身を見られ

るのがいやだったのでほっとした。

13時10分岡山に着いた。

乗り換えの要領もわかってきた私は13時16分発

東京行き「のぞみ26号」に飛び乗った。

車内は混雑していたが、私は自由席最前列の

3席シートの真ん中に座った。

話しぶりからすると両サイドの人は会社の

同僚らしい、が、そんなこと気にしてはいられねえ。

こちとら高い運賃を払っているんだ。

楽しなきゃ。

例え両サイドが恋人同士であっても私は座るだろう。

当たり前だ。

もっとも二人が私の運賃を払ってくれるという

なら話は別だがね。

突「それって、やっかみじゃないですか」

わからない、越前の守でないのだけは確かだがね。

私同様皆空いたところがあれば座った。

JRも新幹線だけ営業していれば大儲けだね.

左の2席シートの女性だけは荷物を足元にも隣の

座席にも置いていた。

立ち客もデッキにかなりいた。

車掌さんが席を空けるよう注意をしに来た。

すると荷物の一つは犬の入ったバスケットだった。

女性は追加料金を請求された。

更に、混み合っているので席を空けるように

求められ、ふてくされたのか犬共々デッキへ

移動してしまった。

JR広報係は珍しい光景を見せてもらった。

多分彼女に悪意はなかったと思いますが、皆さんも

ペット同伴の場合は別料金が必要なことをわかって

やって下さい。

なぜ私がわかりきったような、JRに係る情報を

流すのかわかりますか。

それは我が街が自動車の街で、免許取得率、自動車

所有率とも全国屈指だからです。

70代、80代でも車に乗る人はいくらでもいるし、

旅に出るのも圧倒的に車を利用する人が多いからです。

車が多い街だから当然路線バスも皆無に等しいし、

コミュニティバスが田舎を少し走っているだけなのです。

つまりJRも路線バスもあまり知らない人が多いから

これから乗る人のために説明をしているのです。

そんな事を言ってるうちに京都が近づいてきました。

今まで回った札所を順番に並べていきます。

68 69 66 65 53 52 51 50 49 48

46 47 55 59 58 57 56 54 61 62

63 64 60 3 4 5 2 1 12 13 14

15 16 20 11 10 9 8 7 6 18 19

20 67 70 44 45 43 41 42 40 39

38 37 72 73 74 75 76 77 78 

 

全部で61の札所を廻りました。

残りは27です。

もう一度ではとても無理なので次回18ほど廻り

残りは観光がてら廻ります。

勿論、予土線も、徳島線も、愛ある伊予灘線も、鳴門線も

、牟岐線も、全線乗車をいたします。

 

名古屋駅が近づいてまいりました。

それでは今回のお遍路の総括といきましょうか。

廻ったお寺18 納経料5400円かっきり。

使用した公共交通機関並びに路線名

JR東海道山陽新幹線、瀬戸大橋線、予讃線、内子線、

JR四国バス久万高原線、南予バス、JR予土線、

宇和島自動車バス宇和島宿毛線、土佐くろしお鉄道

中村宿毛線、高知西南交通バス、土讃線、名古屋鉄道。

交通費50000円大雑把。

泊まったホテル ホテル松山ヒルズ 宇和島グランドホテル

中村第一ホテル 善通寺グランドホテル。

宿泊費24000円どんぶり勘定。

飲食費3000円テキトー。(ホテルは別)

お土産代3000円うろ覚え。

総歩行距離53,37キロ万歩計で間違いなし。

道を尋ねた人73人朦朧。

一番印象に残ったもの予土線。夢にまで出て来そうなほど

キョーレツ

総費用85000円+記憶喪失分が5000円。

 

そんなことを言ってると我が家が見えてきました。

あっ、とーちゃんが出迎えてくれました。

 

 

とーちゃんただいま帰ったよ。

えっ、この子のフルネームが聞きたいんですって。

○○トーマスエジソンって言うんですよ。

次回も乞うご期待。